デジタル時代のペーパークラフト

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1. 展開図はどこから?

ペーパークラフトは展開図を準備するところからスタートします。何も無い無地の紙から、いきなり形を作ってしまう「ペーパークラフト作家」と呼ばれるプロの方も存在しますが、我々にとってのペーパークラフトの楽しみ方というのは、やはり展開図を準備して、それを切り取って組み立てる、というのが一般的でしょう。

ところで、ここ数年のパソコンやインターネットの普及などIT技術の進歩には目を見張るものがあります。多くの家庭でパソコンとプリンターが使われるようになり、またブロードバンドによる常時接続も一般的になりつつあります。このコラムも、インターネットが普及した現在だからこそ、このようにインターネットで手軽に公開できるようになったわけです。

これらの変化は、我々の日常生活に大きな影響を与えていますが、それに伴い「ペーパークラフト」のありようも大きく変わりつつあります。

まずは、(最近の若い方は知らないかもしれない)アナログ時代に、どのようにして展開図を入手していたかを紹介し、その後、最近のデジタル時代における展開図の入手方法について紹介します。

アナログ時代

ここでは、デジタル時代との対比という意味で、アナログ時代という表現を用いていますが、厳密な定義があるわけではありません。 しかし、パソコンやインターネットが普及する前、ペーパークラフトというホビーは地道な手作業の積み重ねで楽しむ、まさにアナログなものでした。

インターネットが存在しなかった頃は、現在のように展開図をWebからダウンロードする、なんてことはできませんでしたから、ペーパークラフト用の展開図を入手するのも大変で、書籍や組み立てキットを購入することが一般的でした。

書籍を切り取ってしまうと1回きりですから、展開図を他の工作用紙に写し取ることもよく行っていました。 今でこそコンビニのコピー機で展開図を手軽にコピーできますし、場合によってはカラーでコピーすることも可能ですが(無断での複製は著作権法によって禁じられていることがあります)、以前はトレーシングペーパーとカーボン紙を使って、地道に展開図の転写を行っていました(下図)。


トレーシングペーパーとカーボン紙を用いた展開図の複写
(a) オリジナルの展開図にトレーシングペーパーを載せる (b), (c) 展開図をトレースする (d) 工作用紙の上にカーボン紙とトレーシングペーパーを載せ、再度トレースする (e) 複写の完了

また、目打ちやコンパスの針を使って、展開図の角など目印となるポイントだけを工作用紙に写し取り、それを頼りに展開図を切り取ることも行っていました。 「パンタグラフ*1」と呼ばれる道具を使うことで、展開図を拡大縮小することもできました。

なお、筆者は子供のころ小学館の「紙工作ペーパークラフト入門*2」という書籍を親から与えられ、上記の方法で展開図を工作用紙に転写しては何度も組み立てていました。

デジタル時代

2004年6月の本コラム執筆時現在、検索エンジンとして有名なGoogleで「ペーパークラフト」というキーワードで検索を行うと約5万5千件のページがヒットします*3。これだけ多くのペーパークラフトに関するページが存在し、またその多くのサイトで展開図がJPEGやPDF(下図)などのダウンロードできる形で公開されていたりします。 現在では、一般の家庭にもプリンターがあることが多いですから、好みの展開図を好きな大きさで好きな枚数だけ印刷する、ということが可能になりました。アナログ時代の地道な作業とは大きな違いです。組み立てに失敗した場合には、必要な箇所だけもう一度印刷すればよく、もう1冊書籍を購入するという必要もなくなりました。


PDF形式で公開されている展開図(21yamaha.com*4)

ペーパークラフトに関するサイトを集めたリンク集もいくつか存在し*5*6、特に筆者が運営している「ペーパークラフトデータベース*7」では、現在450を超えるサイトが登録され、日々新しい情報に更新されています。

インターネットから入手できる展開図には有料のものも存在しますが、まだオンラインでの小額決済として一般的なインフラが整っていないためか、ほとんどの展開図は作者の善意によって無料で公開されています。

もちろん、デジタル化が進んだ現在においても「書籍による展開図の入手」は広く一般的に行われており、通常の書店で入手できるペーパークラフトの本も多数存在します。これらは、Amazon*8やbk1*9などのオンライン書店でも検索・購入できます。

参考文献・関連サイト

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